3D アイトラッキングの技術とデータで、棚割りとマーチャンダイジング戦略を次のレベルへ
棚割りとマーチャンダイジングの戦略は、小売企業や製品・ブランドマネージャーのマーケティングミックスのなかでも、かなり古くからある手法です。KA(製品・ブランド・店舗の主要取引先)との強固な関係づくり、好位置の棚スペースの確保、棚のカラーブロッキング、欠品の防止といった施策は、売上を伸ばすためのあらゆる小売企業やブランドマネージャーの戦略の一部です。
では、どうすれば自社の製品を目立たせることができるのでしょうか?誰もが行っているこうした定番の施策以外に、何ができるのでしょうか?そして何より、買い物客と実際に出会ったときに製品が目に留まり、選ばれるように、製品のマーチャンダイジング戦略を「勘と経験」から「科学」へと変えるにはどうすればよいのでしょうか?
こうした疑問に答えるため、データに基づいてマーチャンダイジング戦略を最適化し、前進させるための記事をまとめました。意思決定の際に、経験や勘よりも事実に頼れるようになります。
成果を出すために生まれた、データに基づく新しいアプローチの「なぜ」と「どのように」を詳しく見ていきましょう。
ショッパーデータで製品のマーチャンダイジング戦略を改善する
店舗の売上を伸ばしたい小売企業であっても、製品の売上を伸ばしたいマーケティングマネージャーであっても、マーチャンダイジングと棚割りの戦略について、より根拠のある判断を下すことで、他社と差のつくマーチャンダイジング戦略を実現できます。
コンバージョンと売上の可能性を高めるには、より信頼できる方法、つまりマーチャンダイジングの判断をより的確で根拠あるものにする「切り札」が必要です。
その切り札こそが、ショッパーデータです。
データとは、購買履歴、顧客属性、製品の好み、カスタマージャーニー、エンゲージメントのパターン、棚への注意などを指します。こうした情報こそが、マーチャンダイジング戦略を際立たせるのです。
しかし、データを手に入れるのは必ずしも簡単ではありません。
ショッパーデータを取得する際によくある課題
マーチャンダイジング戦略の一部は、たいてい経験や一般的な慣行に基づいた当て推量のように感じられるものです。
ビッグデータとは、それを乗り越え、消費者の買い物の習慣をより深く理解することを意味します。
この種のデータを得るために、多くの小売企業はフォーカスグループや、POS システム、来店客数の分析デバイス(ピープルカウンターやビーコン)から得た分析データを利用しています。これらはデータに基づく意思決定を可能にする便利なツールですが、顧客が何を望み、何を買いたいのかを深く描き出すには限界があります。
その理由を見ていきましょう。
フォーカスグループ
たとえば、ブランドマネージャーとして製品ポートフォリオの次の SKU のパッケージを決める際、よく行われるのがフォーカスグループの実施です。しかし、フォーカスグループでの回答は考えすぎたものになりがちで、後からの理由づけによって変わってしまうため、必要なほど客観的ではないことがよく知られています。
完璧にバイアスのないフォーカスグループを実施できたとしても、製品が注意を引きつけ続ける力についてのデータは得られません。フォーカスグループの場では一目で注意を引くかもしれませんが、そのパッケージは注意を持続させ、購入される可能性を高めることができるでしょうか?
目の高さは買う高さ
小売調査において、視覚的注意は顧客が自然に関心を寄せているものを明らかにします。 ツイートする
棚のマーチャンダイジングについては、誰もが基本ルールを学んできました。マーチャンダイジングの効果は目の高さの棚への関心に集約される、つまり「目の高さは買う高さ」です。製品はまっすぐ見たときの視線の高さに置く必要があります。それよりずっと低い位置や高い位置に置かれた製品はあまり気づかれず、買い物客の注意を集めにくくなります。
目の高さという注目のエリアでの注意の奪い合いを考えると、必要なのは……競合が知らないことを知ることです。
つまり、「目の高さは買う高さ」というアプローチは、棚のマーチャンダイジングの出発点としては良いかもしれません。
- しかし、製品は右寄りに置くべきでしょうか、それとも左寄りでしょうか?
- 3段目と4段目(どちらも目の高さだとして)のどちらが製品に適しているでしょうか?消費者が最初に見るのはどこでしょうか?
- パッケージの色がより目立つ同業ブランドの隣に置くべきでしょうか?
- その場所は自社の製品を引き立ててくれるでしょうか、それとも買い物客はすぐにその周辺のほかの製品に目を奪われてしまうでしょうか?
- 棚割りのなかで、一瞥されただけの製品はどれで、注意を引きつけ続けた製品はどれでしょうか?
適切なマーチャンダイジング戦略を実行するには、こうした問いに答えられること、そして購入に至る前の店内での買い物客の行動について、実際の、客観的で、直接的なデータにアクセスできることが必要です。
買い物客の「その瞬間」を捉え、製品に対する本当の反応とフィードバックを観察できなければなりません。
そしてそこで役立つのが 3D アイトラッキングです。負担をかけずに、ユーザーのあらゆるデータを捉えることができます。
3D アイトラッキングでバイアスのないショッパーデータを得る方法
小売において、顧客が何を考え、何を望んでいるかを直接観察するための手法の一つがアイトラッキングです。
買い物客の目の動きを分析すれば、その人の認識、意図、そして今後の行動について多くのことが分かります。
また、製品についても多くのことが分かります。製品の売上が伸びたことは販売数から分かりますが、製品が買われなかった理由が、見られなかったからなのか、気に入られなかったからなのかを理解できるのは、アイトラッキングを使った場合だけです。
これまでアイトラッキングは、主に専用の眼鏡やヘッドセットを使って行われてきました。これらを顧客に渡し、買い物の間に装着してもらうのです。
この手法は長年にわたってその有効性を証明してきた一方で、装着の負担が大きく管理された環境での手法であるという限界も明らかになりました。そこで Eyeware Tech は、市場調査とアイトラッキングをさらに一歩進め、最大1.3m(4.3フィート)離れた位置から視覚的注意をリモートで追跡する技術、3D アイトラッキングを開発しました。
つまり、次のような特長があります。
- 眼鏡は不要 :負担のない手法です
- VR ヘッドセットも不要:買い物中に重い機器を身につける負担がありません
- 買い物客への個別の声かけも不要:すべて匿名で、GDPR にも配慮しています
- キャリブレーションも不要
必要なのは深度センサーカメラだけで、GDPR に配慮した匿名の方法で何千人もの顧客を追跡できます。
市販の深度センサーカメラを使い、店舗や分析対象(棚の陳列、製品など)をマッピングするために開発された 3D アイトラッキングソフトウェア GazeSense を利用することで、複数の対象者を追跡し、オープンな空間にある関心対象(棚、陳列、その他の販促物)にラベルを付けて、それらへの注意をリアルタイムで追跡できます。
データを活用してマーチャンダイジングと棚割りの戦略を前進させる方法
マーチャンダイジング戦略を立てるとき、特に小売企業にとっては、細部まで抜かりなく詰めることが欠かせません。店舗(マーケティングマネージャーであれば製品)のマーチャンダイジングを大きな視点で考えるだけでなく、細部にまで目を向ける必要があります。小さくても ROI に大きな影響を与えうる、棚やマーチャンダイジングの細かな施策です。
以下に、店舗やブランド・製品のマーチャンダイジング戦略を立てる際に考慮すべき重要な要素のチェックリストをまとめました。
さらに、マーチャンダイジング戦略に独自の強み(USP)を加えるために、3D アイトラッキングをいつ、どのように活用できるか、そして何より、この技術がより良く根拠のあるマーチャンダイジングの判断にどう役立つかについて、いくつかのアドバイスもご紹介します。
店内レイアウト
小売企業であれば、マーチャンダイジングと店舗レイアウトの強い結びつきをご存じでしょう。買い物客は店舗の見た目に惹きつけられることがあり、買い物リストを手に通路から通路へと移動するよりも、店舗や棚での体験を楽しみたいと考えています。
3D アイトラッキングを店内レイアウトの改善に活用すれば、次のような問いを分析し、明確な答えを得ることができます。
- 来店した買い物客の注意は、最初にどこに向かうか?
- 人通りの少ない通路や多い通路で、人々は何を見ているか?
- 棚の端で目を引いたのはどのディスプレイか(右側か、左側か)?
実際に、このプロセスの最後には、実際の具体的なデータに基づいて、買い物客の体験と売上をより良い方向へ導くことができます。混乱しやすい場所、注意が集まるホットスポット、気が散る要因が明確になるため、店舗レイアウトを改善し、店内をより回りやすくできます。
一人ひとりに合わせた店内体験をつくるために必要なものがすべてそろいます。これらのデータがあれば、最適な場所、最適な製品、最適なサイネージを組み合わせて、魅力的な店内のホットスポットやエンゲージメントエリアをつくることができます。
棚レベル
マーチャンダイジング計画で最も重要な部分の一つは、棚を戦略的にどう配置し、棚割り(プラノグラム)をどうつくるかです。
どの製品に好位置の棚が必要で、どの製品なら少し目立つ場所に置くだけで売れる可能性が高まるのかを知ることは、売上にとって極めて重要です。たとえば、プライベートブランドを持つ小売企業が、プライベートブランドの製品を置くために、買い物客が棚で2番目に見る場所を正確に知りたいとします(1番目の場所は、そのカテゴリーで売れ筋のブランドに確保しているとします)。
3D アイトラッキングは、複数の対象者と、棚の前での注意の持続時間を分析できるため、この種のデータにアクセスできます。GazeSense ソフトウェアでは、次のようなことを追跡できます。
- 買い物客が棚の特定の製品に注目するまでにかかった時間
- 最初に注目したエリアと、視線を向けた順序
- 商品を見た回数
- 棚の商品を初めて見たときに注視していた時間
- 商品を注視していた時間の平均
視線の向け方、目の動き、まばたきのくせの一つひとつが、特定の製品に対する潜在意識での認識を物語っています。
3D アイトラッキングソフトウェアを使えば、ヒートマップやオパシティマップを生成してこうした情報を表示できます。棚のなかで暖色であるほど、あるいは明るいほど、そのエリアが多くの視覚的注意を集めていることを示します。
この種のデータを分析すれば、棚割り戦略の意思決定は、当て推量に頼ることなく、良い結果につなげやすくなるほど専門的で「事情に通じた」プロセスになります。
棚割り戦略を実施した後に顧客がどう行動するかを見て、変更が必要かどうかを判断するのを待つ必要はもうありません。最初から模範的な棚の実施と良い結果を直接得ることができます。
ディスプレイのパフォーマンス
ある製品が、ある店舗では別の店舗よりもよく売れている場合、よく売れた店舗でなぜその製品がそれほど求められたのかを知ることが大いに役立ちます。
チェーンのすべての店舗に、その製品向けに同じ販促(POP)キットやディスプレイを用意したのに、結果が異なることもあるでしょう。何がその違いを生んだのでしょうか?あるいは、形や色の異なる2種類のディスプレイの試作品を用意し、どちらがより注意を引くかを確かめたいこともあるでしょう。
ディスプレイのデザインやディスプレイキットに買い物客がどう反応するかを確かめる一つの方法は、店内のディスプレイに向けられた注意を追跡することです。
3D アイトラッキングを使えば、どのサイネージがまったく無視されているか、どの形・色・種類のディスプレイがより注意を引くか、どの CTA が人を振り向かせ、注意を引きつけ続けるかが分かります。
こうして、ディスプレイのパフォーマンスを測定・報告し、次のような重要な問いに答えることができます。
- 通路を通り過ぎるとき、買い物客は何を見て、何を見ていないか?ディスプレイはそれにどう影響しているか
- どのディスプレイが見られ、どれが見られず、どれが気づかれただけ(3秒以上)、どれが読まれた(2秒以上)のか。どれが注意を引きつけ続け、最終的にどれがより多くの売上をもたらしたのか
- ディスプレイのプロモーションは読まれているか、一瞥されただけか、無視されているか?キャンペーンの好結果は、これらのディスプレイのおかげか?
- さらに、さまざまなプロモーションを伝えるディスプレイが通路から注意を奪っているのか、それとも売上の伸びに貢献しているのかも分析できます。
製品パッケージ
店舗レイアウトと棚のパフォーマンスへの取り組みは、小売マーチャンダイジングというパズルの2つのピースです。それらと並行して、製品のマーチャンダイジング戦略も策定する必要があります。
完璧な棚の位置を確保できても、それを支える魅力的なデザインがなければ、最高の結果は得られません。
3D アイトラッキングは、マーケティング上の大きなジレンマに直面したときに、重要な問いに答えを出してくれます。すでにお伝えしたように、製品が売れなかった場合に戦略を変えるうえで大きな違いを生み、製品が買われなかった理由を説明できます。買い物客が単に製品を見なかったのか、それとも見て検討したうえで買わないと決めたのかを追跡できるのです。製品マネージャーやトレードマネージャーとして次の一手を考えるうえで、これは非常に役立ちます。
3D アイトラッキングは、大きな製品発売を控えている場合に、その前にブランディングやパッケージを棚の上で直接評価するのにも役立ちます。新製品や限定版製品を発売したい場合に、パッケージやブランディングの A/B テストを適切に実施できます。2種類のパッケージデザインを交互に棚に置くことで、どちらが買い物客の目に、そして最終的には買い物かごに、より受け入れられるかが分かります。
広告キャンペーンも同様です。全国展開の前に、1~2店舗の地元店舗でさまざまなメッセージをテストできます。
購入の瞬間の買い物客の反応と視線を追跡することで、ブランディングや広告キャンペーンを評価する際に本当に必要な、ありのままの反応が得られます。そしてありのままの反応は、店内キャンペーンの訴求力についての純粋なデータと、データに基づくマーチャンダイジングの判断につながります。
小売マーチャンダイジングにおける競合との比較
競合調査も忘れてはなりません。買い物客が自社の製品と競合の製品にどう関わっているかについて、かつてはバイアスのかかった当て推量しかできませんでしたが、今では事実に基づいて把握できます。
3D アイトラッキングを使えば、棚の前で購入者がどれだけ迷っているか、購入前にいくつのブランドを見たか、それがどのブランドだったか、自社と競合のどちらをより長く見たか、そして最終的にどれを選んだかが分かります。
さらに、購入に関して、買い物客が自社を競合とどう違って捉えているかも分かります。自社は最大の競合よりも「手に取ってすぐ買う」製品なのか、それともその逆か?棚の前で競合と並んだとき、自社の製品は真剣に検討されているのか、それとも素通りされているのか?
店内や棚での自社の位置づけを比較によって理解することで、状況を客観的に捉えられ、小売マーチャンダイジング戦略を進めるうえでの貴重なヒントが得られます。
まとめ:小売マーチャンダイジングはテクノロジーの時代へ。あなたは適応し、進化できますか?
オンライン小売のマーチャンダイジングでは、データ分析が当たり前になりました。オフラインの小売でも、もっとそうあるべきです。
今では、顧客属性、来店客数、地域の買い物行動に加えて、店内での買い物客の行動と、製品、棚、ディスプレイに向けられた注意についての新しい深いデータで補完できます。
3D アイトラッキングによって、マーチャンダイジングは「勘と経験」よりも「科学」に近づき、店舗、棚、ディスプレイの戦略的な配置は、当て推量ではなく計算されたプロセスになりつつあります。
ディスプレイのどの要素が買い物客の注意を引いたのか、棚のどの部分が最初に見られたのか、特定の製品がどれだけ目を引くのかが分かるようになりました。どのエリアが販売やプロモーションに適していて、認知向上キャンペーン用に確保すべきかも分かります。
アイトラッキングは、小売企業の市場調査とマーチャンダイジング戦略のプロセスにおいて欠かせない「常連」となり、小売業界をより技術的な業界へと変えていくと言ってよいでしょう。テクノロジーと AI が牽引するこの小売環境では、後戻りはありません。新しいトレンドに遅れずについていき、市場での競争力を保てるかどうかは、小売企業次第です。